「わたしの晩酌 唐揚げの話」村山由紀子

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2018/10/05

「わたしの晩酌 唐揚げの話」村山由紀子

結婚してから知ったことのひとつに「鶏の唐揚げの味付けが家庭によって結構違う」という事実。地域性なのか、単に料理を作っていた母親の好み(私はこれが強い気がしているけど)なのか。
初めて夫に唐揚げを作った時にあまり美味しそうな顔をしなくて、料理の仕事をしている私にとっては少なからずショックだった。
「何でだろう」と思ったら、夫が食べ慣れた唐揚げと味付けが違うことが分かった。義母が作る唐揚げは、圧倒的に甘かった。
初めて食べた時は驚いて「ええーー、唐揚げが甘いなんて!」率直にそう思った(笑)
私が食べてきた母の作る唐揚げはショウガが効いた醤油味。甘みは全くない。
もちろん私の好みはこちら。
そんな事実を知って5年ほど。我が家で作る唐揚げの味付けはどうなったか。
ふたりの好みの味の間をとって、少し甘みを足して作るようにしている。きっと夫には足りない甘さだろうけど(笑)
食べ続けてきた味ってなんなのだろう……といろいろ考えながら、今日もビールを飲みつつ、唐揚げを噛み締めた。

村山由紀子

料理家村山由紀子

素材の持つ美味しさを引き立てるシンプルな料理を得意とする。四季を楽しむ料理、生活を心がけながら、日々過ごしている。著書に『パンのおかず50』(実業之日本社)、『天板一枚で!毎日のオーブンおかず』(河出書房新社)など。近著に『ベジヌードル』(主婦と生活社)がある。
http://murayamayukiko.com