ファーマーズテーブル店主・石川博子さんの自分らしい仕事のやり方
2018/10/03
仕事と暮らしの充実は、働く女性にとって大きなテーマです。
飽き性だというファーマーズテーブル店主の石川さんが、唯一続いたというのが、今の仕事。「店内に気に入らないものはひとつもない」と言い切る石川さんが、今日まで続けられた理由は「頑張りすぎないこと」と自分で決めたから。それは心地よい暮らしにも共通し、豊かな生活を送るためのルールでもあったのです。
私のマイルーティーン
1.毎朝 、犬の散歩をする、開店前にコーヒーを飲む
2 .夕食は家族そろって外食する
3.化粧はしない
4.夕食は家族そろって外食する
5.自分の店には好きな物以外は置かない
6.月1 回、茨城のセカンドハウスに行く
7 .毎年年賀状には、家族写真を使う
MY TO DO LIST
*健康管理に気を遣う
*今を精一杯楽しむ
*ステキな人をチェックする
*家族を大切にする
「80歳になっても、自分らしく仕事を続けていたい」という石川さんが心がけているのが、この未来へのTO DO LIST。
自分に合う働き方を
「子どものころから、お習字もピアノも続きませんでした。健康のためにと、体操を始めてみても3日と続かない。こんな飽き性の私が、30年以上も店を続けてこられたのは、自分の力以上のことをせず、好きなことを自由にやってこられたからだと思います」
そう話すのは、恵比寿にある雑貨店『ファーマーズテーブル』のオーナーである石川博子さん。自分を縛りつけるのはしんどい。だから「ルールを作らないのが私のルール」と言い切る。
「夏休みの宿題とかで一日の時間割を円グラフにするというのがあったでしょ? 一生懸命考えすぎて、結局ストイックなものを作ってしまうから、頑張っても続かないの。ルールも同じ。自分が苦しくなるから作りません」
とはいえ自由奔放、順風満帆だったわけではない。
開店当初はお客さんが来ず、不安になって悩んだことも。
「夫に相談したら〝やめたいならやめてもいいんだよ。でも、やれることは全部やったの?〞と聞かれ、仕事に対するスイッチが入りました」
なんとなく仕事をしていたことに気づいてからは、考え、工夫するようになり、少しずつ壁を乗り越えると、仕事が楽しくて仕方がなくなった。一軒家に移転してカフェと雑貨店をやったり、精一杯やってきたが、仕事の仕方は少しずつ変わってきたという。
「以前は、他の人がやっていることをやらないと怠けている気がしました。だから大きな展示会には必ず行っていたのですが、今はみんながやっているからって、無理しなくていいかなと思えるようになりました。その時の自分に合う、自分らしい仕事のやり方があると思います」
毎朝店内を眺めて物の見え方を確認。
替えたいと思ったら、大きな棚も、高い所の物も配置換えをする。
『ケメックス』を使ってコーヒーを入れるのが開店前の朝の日課。
日本で初めて『ケメックス』を取り扱ったのは『ファーマーズテーブル』だった。
長く取り扱っている荒川尚也さんの泡グラスは、いつも窓辺でキラキラ。
窓ガラスはいつもピカピカに磨かれている
心地よく過ごすための日課
ルールはないが、心地よく過ごすための日課はある。
朝は石川さんが犬の散歩をする。朝食は一年前位からご主人の担当。ご飯と味噌汁、焼き魚などの和食が食卓に並ぶ。化粧は息苦しく感じるからしない。開店の約3時間前に家を出て、15分かけて店まで歩いて行く(雨の日はバスに乗る)。店では「ケメックス」でコーヒーを入れ、店内を眺めながらコーヒーを飲む。
「ディスプレイを整えるのが朝の日課ですが、こうしたい! とひらめいたら大忙し。模様替えの始まりです。家でも模様替えはしょっちゅう」と、とても楽しそう。ともに店で働く娘の水木さんは、「私より子どもだなと思うこともありますが、母が選ぶ店の商品は、全部好きです」と、胸を張る。
働く母の姿を近くで見ている娘の言葉は、温かくて力強い。
「休日はソファでぼ〜っとしています」と笑うが、心地よい空間で、家族と過ごす時間は何物にも代えがたい。自宅リビングの壁には家族写真や植物、オブジェなどが所狭しと飾られている。本棚の本もカバーがあったりなかったり。〝決めすぎない、整えすぎない〞が、心地よい暮らしの空間を生み出している。
今、石川さんは60歳。これからの夢を問うと、こう答えてくれた。
「店を続けることが夢。続けたくても、求められなくなったら終えるしかない。だからこそ、今できることを精一杯やるだけです。80歳になっても働いていたいから」
一面のガラス窓から心地よい陽射しが差し込む部屋。
石川さんのたいせつなもの
壁には写真がズラリ。毎年家族で撮っている年賀状も。
愛犬のアデもお気に入りのチェアは、福岡の骨董品店でひと目惚れしたもの。
思い入れの深い『ケメックス』のコレクションも。
30年以上も愛用しているバーバラ・アイガンのマグカップ。
ご主人作の針金のオブジェからアンティーク品、拾ってきたものも!
拾った石のコレクションをディスプレイ。
模様や形、色が不思議で、つい見入ってしまう
【PROFILE】
石川博子
文化女子短期大学卒業後、文化服飾学院卒業。スタイリストを経て。1985 年「ファーマーズテーブル」をオープン。著書に『「ファーマーズテーブル」石川博子 わたしの好きな、もの・人・こと』(主婦の友社)
CHRONOLOGY
1980 文化服装学院卒業後、スタイリストとして就職(21歳)
1984 退職(25歳)
1985 雑貨店『ファーマーズテーブル』OPEN(26歳)
2000 原宿キャットストリートに移転(10年契約の物件)
カフェ『ファーマーズカフェ』OPEN(42歳)
2010『ファーマーズテーブル』恵比寿に移転(52歳)
2018『ファーマーズテーブル』まだまだ継続中!(60歳)
自分を縛り付けながら働くのではなく、その時の自分に合った仕事をするのが心も身体も健康でいられる秘訣なのかもしれません。気に入ったもののそばにいることで、不思議と優しくなれたりするもの。それは、家具でも食べ物でもペットでも好きな人でもいいのです。