あなたはいくつ知ってる? 世界のパンの教科書
2018/07/16
世界の主食として発展してきたパン。日本でも朝食にパンを食べるという人は多いのではないでしょうか。もはや私たちの暮らしに欠かせないパンですが、みなさんはそんなパンの名前をいくつ挙げることができますか? 素材や食感、大きさ、形によって、パンには実にさまざまな種類があります。定番のフランスパンからチーズの入ったポンデケージョなど、世界のパンの特徴を文化や背景とともにご紹介!
BAGUETTE ー バゲットとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
フランスの家庭で最もポピュラーなパンとして知られているバゲット。フランス語で“棒”という意味で、その長さは70 ~ 80 ㎝と、フランスパンの中でも細長い。まわりのクラスト(外皮)のパリパリとした香ばしさは焼きたてが魅力で、時間が経つと水分を吸って食感が悪くなる。クープ(表面の切り込み)がよく反り返っているものが美味しいとされる。バゲットを薄く切ってさまざまな具材をのせて作るタルティーヌとしての食べ方も楽しい。似ているものに、バタールやパリジャン、フィセルなどがある。
CROISSANT ー クロワッサンとは ー
タイプ:リッチ系 主原料:小麦粉
クロワッサンは、バターやマーガリンをパイ生地のように何層にも折り込んで焼き上げる、三日月型のパン。生地を二等辺三角形にカットし、底辺から巻いて、発酵焼成したもので、ウィーンから伝わったとされる。1683 年にトルコ軍を打ち破ったウィーンで、トルコの国旗の三日月を模したパンをつくって食べたのが始まりという言い伝えがある。現在は朝食や間食として食べられることが多く、フランスではコーヒーやカフェオレに浸してふやかしながら食べるのが一般的。
FOCACCIA ー フォカッチャとは ー
タイプ:リッチ系 主原料:小麦粉
“フォカッチャ”とは、“火で焼いたもの”という意味。発酵生地を平たく伸ばして焼いたものがポピュラーだが、イタリア全土には無発酵のものや、薄くてパリッとしたタイプなどさまざまな種類がある。生地にオリーブオイルを練り込んでいるため、時間が経つと油脂分が表面に現れる。食事パンとしてよく食べられ、ピザの原型ともいわれる。そのままでも美味しいが、ハムや肉や野菜、チーズなどをたっぷり挟んで食べるのも人気。
BAGEL ー ベーグルとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
もとはユダヤ人が食べていたパンで、移民の多かったアメリカでも広がり、後にニューヨークの名物となった。作り方に特徴があり、焼く前に生地を熱湯にくぐらせることによって、独特のもちもち感を生み出している。ずっしりと食べ応えがあるが、卵や油を使用しないため意外にローカロリー。ベーグルはバリエーションが豊富で、生地にフルーツやシナモンなどを混ぜたものもよく売られている。厚みのある生地が水分を受け止めてくれるので、具材を挟んでサンドイッチとして食べるのもおすすめ。
CORN BREAD ー コーンブレッドとは ー
タイプ:リッチ系 主原料:トウモロコシ粉( コーンミール)
コーンブレッドは、コーンミール(トウモロコシの皮や胚芽を取り除いて挽いた粉)を使って焼いたクイックブレッド。地域や家庭によって形や材料の配合はまちまちで、アメリカ北部は甘いケーキのような味わい、南部のものは甘くないことが多い。トウモロコシの香りが特徴で、小麦粉を混ぜることもあるが、コーンミールの配合が多いものほど、素朴でサクッとした食感になる。日本ではあまり馴染みのないパンだが、アメリカでは感謝祭やその週末に七面鳥料理と一緒に食卓にならぶなど、家庭の味として親しまれている。
MANTOU ー 饅頭とは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
小麦粉を酵母で発酵させて、蒸して作る中国の蒸しパンのこと。日本では中華饅頭が有名だが、具のない饅頭がパンの基本となる。本来は、中国古来より伝わる老麺法で作られる。ほんのり甘く、淡白な味わいは、濃い味の中華料理にも合う。現地では安く売られているので、主食としておかずなどと一緒に食べられる。
GRISSINI ー グリッシーニとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
グリッシーニは細長いスティック状の食事パンで、クラッカーに近いポリポリとした硬さがあり、あっさりした塩味。チーズやハーブなどを入れて作ったアレンジバージョンも多い。レストランでは食前にかごに盛られて運ばれるもので、前菜やワインのおつまみとして人気。シンプルにそのまま食べてもよいが、生ハムを巻きつけても美味。イタリアはピエモンテ地方でつくられたといわれ、フランスやドイツにも似たようなパンがある。
TORTILLA ー トルティーヤとは ー
タイプ:リーン系 主原料:とうもろこし粉
メキシコでは栽培が盛んなとうもろこし粉を使ったトルティーヤ(トルティージャ)が主食。無発酵の生地を薄く焼いたもので、とうもろこしの香りがする。日本では肉野菜とチリソースを巻いたタコスが有名だが、現地の家庭ではそのまま食べたり、油で揚げるトスターダスや辛いソースに浸すエンチラーダスとさまざまな料理に使われる。またトルティーヤでチーズなどを包む、ケサディーヤというファストフードもある。
ENGLISH MUFFIN ー イングリッシュマフィンとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
イングリッシュマフィンは、マザーグースの童謡に出てくるほど昔からある伝統的なパン。厚めの丸型を使い、コーングリッツ(コーンミール)を表面に振って、八割が焼き上がったら取り出して完成。完全に焼ききらないので水分が多く、少しもっちりとした食感がある。食べる時は、手やフォークで上下ふたつに割り、トーストすることで表面の香ばしさを味わう。
PÃO DE QUEJO ー ポンデケージョとは ー
タイプ:リッチ系 主原料:タピオカでん粉
ポンデケージョは、タピオカの原料であるキャッサバの粉を主原料にした無発酵の生地に、チーズを加えてつくる。食べると外はサクサク、中はもちもちの独特の食感があり、口いっぱいにチーズの香りが広がる。パン屋さんからバーまで、どこでも定番のメニューで、朝食にコーヒーと一緒に、または少しお腹がすいたときなどおやつ感覚で食べられている。
SPANDAUER ー スパンダワーとは ー
タイプ:リッチ系 主原料:小麦粉
スパンダワーはデンマークの代表的なデニッシュペストリー。デニッシュペストリーはアメリカから入ってきた呼び名で、もとはウィーンからヨーロッパに広がった。こちらは、デニッシュ生地に、卵とミルクのやさしい味のカスタードクリームを絞って焼いた伝統的なもの。同じ生地を用いたものでも、シンプルにけしの実をトッピングした“ティビアキス”など種類は豊富。
CHAPATI ー チャパティとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
チャパティはナンに比べるとより庶民的で、インドでは、各家庭で毎日焼いて食べる、日常的な主食パン。インドの他、ネパールやパキスタンなどでも食べられている。小麦粉と全粒粉に水を加え、発酵させずに薄くのばして鉄板で両面焼いたもので、右手の指でひと口ずつちぎって食べるのが慣例。噛むほどに、素朴な全粒粉の味わいが感じられる。
PRETZELS ー プレッツェルとは ー
タイプ:リーン系 主原料:トウモロコシ粉
ドイツのパン屋のシンボルともなっている、ユニークな形。カリッとして塩味の利いたものが主流だが、もちもちと軟らかいもの、甘いものもある。最もよく見かけるのが、ラウゲンプレッツェルで、ラウゲン液(苛性ソーダ)につけて、表面をなめらかにし赤褐色に色づけするのが特徴。ミュンヘンのビール祭り「オクトーバーフェスト」のビールのつまみの定番となっており、まぶされた塩を食べる直前に手で落とし、残った塩味を味わうという変わった食べ方をする。
PITA BREAD ー ピタパンとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
ピタパンは、中近東の都市部で日常的に食べられているパン。生地を薄くのばし、高温にして短時間で焼き付けるため、中に空洞が生まれる。シリアのシャミーと同様に、このポケットに具を入れて食べるのが一般的。現地ではファストフードとして親しまれている。クセがないので食べやすく、形もふんわりと厚みのあるものまでいろいろなタイプがある。
ROGGENBROT ー ロッゲンブロートとは ー
タイプ:リーン系 主原料:小麦粉
ドイツを代表するライ麦パン。ライ麦特有の香りとコクのある酸味、しっとりとしたクラム(表皮)が特徴。粉の比率によって呼び名が変わり、ライ麦が90%以上のものをロッゲンブロート、ライ麦と小麦を合わせたもので、ライ麦のほうが多いとロッゲンミッシュブロート、小麦のほうが多いとヴァイツェンミッシュブロートと呼び分けている。薄くスライスしてバターを塗り、チーズやハム、ピクルスなどをのせたり、肉や魚介をペースト状にしたものを塗ったりして食べる。
世界のパンの物語、楽しんでいただけましたか? アジアやヨーロッパなど、さまざまな国や地域で、その土地ならではの食文化とともにパンが生まれ親しまれていることがわかります。パンを通して世界の食文化を味わってみてはいかがでしょうか。
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パン図鑑
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