2017/11/02
「大豆のフムス」
金木犀の香りが冷たい風にさらわれ、いよいよ冬の訪れです。立冬を迎えると新豆が出始める頃。わたしは早速小豆や金時豆、大豆を煮始めます。大豆をひと晩水に浸し、ふっくらと戻ったら大きな鍋に移して火にかけると鍋からは豆のほのかに甘い香りが漂い、温かな湯気が窓を曇らせます。
大豆は他の豆より煮るのに時間のかかる豆ですが、寒さに向かう中、鍋から立ち上る湯気に包まれながら本を読んだり、編み物をしたりして過ごす時間が心を落ち着かせてくれます。大豆は煮上がったら熱いうちにマッシャーでつぶし、オリーブオイルと美味しい塩、少しのクミンパウダーを加えて混ぜ、フレッシュバジルを香りよくちぎって混ぜ合わせます。
オリーブのカッティングボードに盛ったらたっぷりのオリーブオイルと塩をふって焼き立てのパンを添えていただきます。ここにワインがあれば、キャンドルに火を灯して長い夜を過ごします。大豆は気を補い、疲れた体を癒し元気を与えてくれる食材です。胃腸の働きを助け潤しながら、水分の代謝を促してくれます。空気が乾燥し寒さが増して代謝が滞りがちな季節。大豆で心も体も潤すのが冬の始まりの楽しみです。
料理研究家コウ静子
料理研究家。料理研究家である母、李映林氏のアシスタントを務めたのち独立。韓国薬膳要素を取り入れた、身体に優しい料理に定評がある。雑誌や書籍、テレビ番組などで活躍中。著書に『症状別 不調の時に食べたいごはん』(家の光社)などがある。