2018/10/19
小さな頃からおでんは好物のひとつ。
下町風情残る地域で育ったのもあるのか、近所には昔ながらの佇まいのおでん屋、天ぷら屋、寿司屋、蕎麦屋が多かった。おでん屋さんに入ると、ふわっと香るダシの香り。そしてそれはそれは大きな鍋にたくさんのおでん種が入っていて、茶めしと食べるおでん、子供ながらにワクワクしたものだった。
また、たまに父がお土産で買ってきたおでん。これは缶に入っていた。
おでんダシは関東風のしっかりしょう油味。これが当たり前だと思っていた。
いつからだろう、あの淡い色のおでんが私の日常に入り込んできたのは。社会人になってからかな。気付けば自分で作るおでんも塩と薄口しょう油を使った淡い色のおでんになっていた。
今日は、そんな思い出に浸りながら、私流おつまみおでんを作った。ひとくちサイズのおでん種を串に刺した「串さしおでん」。
ダシは煮干しと昆布。そこにみりん、塩、薄口しょう油で調味した。揚げボール、つみれ、うずらの卵、ちくわぶ、インゲンを入れたちくわ、ペコロス、トマト。具材は串に刺して一緒に煮込むだけ。とても簡単だけど、おでん種がそれぞれに良いダシの素となり、一層美味しくなる。
日本酒をこのおでんダシで割ったものを今日のお酒として、おでんと一緒にいただいた。
身体の芯から温まる夜だった。
料理家村山由紀子
素材の持つ美味しさを引き立てるシンプルな料理を得意とする。四季を楽しむ料理、生活を心がけながら、日々過ごしている。著書に『パンのおかず50』(実業之日本社)、『天板一枚で!毎日のオーブンおかず』(河出書房新社)など。近著に『ベジヌードル』(主婦と生活社)がある。
http://murayamayukiko.com