FOOD & RECIPE

粉、酵母、塩、水はどう選ぶ? 材料選びで広がるパン作り

2018/07/18

粉、酵母、塩、水はどう選ぶ? 材料選びで広がるパン作り

パンを作るうえで最もシンプルな材料は、粉、酵母、塩、水だけ。でもその組み合わせ次第で無限の広がりが生まれるからおもしろい。パンの食感を決める“粉”、生地を膨らませる“酵母”、味を引き締める“塩”、すべての材料をまとめる“水”。一緒に焼きたい食材や調理時間、季節なども考慮してミックスする素材を選んでみましょう。パンのレシピは多彩です。

FLOUR 小麦粉

パンの粉の代表格である小麦には、異なる特徴を持つ多くの品種がある。
国産なら主産地である北海道産だけでも品種はさまざま。
ふわふわのパンからハード系のパンまで、味わいや食感の決め手に。
個性豊かな小麦粉でひと味違うパン作りをしてみませんか?

強力粉
強力粉 パン作りに一番使われている粉
タンパク質の含有量が多い順に、ふっくらふわふわになる最強力粉、しっとりふんわりになる強力粉、外はパリッと中はモチっとする準強力粉に分類される。

薄力粉
薄力粉 パン作りには強力粉と混ぜて使う
タンパク質が少ないものほどさっくりとした仕上がりに。菓子パンやハード系など、歯切れのいいタイプのパンを作る時、強力粉と混ぜて使うことが多い。

中力粉
中力粉 主に麺やお菓子に活躍する
タンパク質が少なめな国産小麦にはここに属するものも。焼き上がりのボリュームには欠けるが、小麦本来の味わいを楽しむことができ、きめ細やかな仕上がりになる。

全粒粉
全粒粉 食物繊維やミネラルが豊富
食物繊維や鉄分などが豊富に含まれている。パン作りには強力粉に10~30%程度混ぜて使うことが多い。どっしりとしたドイツパンには欠かせない粉。

ライ麦粉
ライ麦粉 独特の豊かな風味と甘みを持つ粉
独特の酸味と甘みを持ち、密度の高いずっしりとした焼き上がりになる。ライ麦の挽き方によっても、風味や食感に違いが出る。保水性が高く、日持ちするのも特徴。

米粉
米粉 モチモチ食感の香ばしいパンになる
精白米を粉砕して粉にしたもの。お米の優しい甘みともっちりとした食感で人気が高い。グルテンや小麦粉が添加された製パン用米粉が販売されている。

SALT 塩

味付けはもちろんのこと、酵母の働きを助け発酵の手伝いをしてくれたり、
パン生地のコシを強くするなど、大事な役割を担っている。
雑菌の繁殖を防ぎ、こんがりとした焼き色がつくのも塩のおかげです。
大まかな塩の分類を一覧で見てみましょう。

図

岩塩

地殻変動のため海底が隆起するなどで、陸上に閉じ込められた海水の水分が蒸発し、
長い時間かけて濃縮、結晶化してできた塩。

アルペンザンツ
アルペンザンツ
ドイツ・アルプス山脈のふもと、バード・ライヒェンハルの岩塩層からつくられた。
コクのある豊かな味わいで、素材の旨味が引き立つ。

 

海水塩

いづれの塩も、もとは海水から作られるものだが、原料や製法によって塩の種類が
イオン膜塩、再製加工塩、釜焚き海塩、天日海塩の4つに分けられる。

 

イオン膜濃縮塩
海水をイオン交換膜製法と呼ばれる方法で濃縮して、濃い塩水をつくり、
その後、釜などで煮詰めて結晶させてつくる食塩。ナトリウムの純度が高い。

瀬戸のほんじお
瀬戸のほんじお
瀬戸内の海水のみを使用してつくられた国産原料100%のあら塩。
同じ瀬戸内の海水から一緒に採った“にがり”分が多く含まれている。

 

再製加工塩
オーストラリアやメキシコなどの海水からつくられた天日塩を輸入して、
一度溶かしてから、にがりなどのミネラル分を添加して再結晶させたもの。

伯方の塩
伯方の塩
メキシコまたはオーストラリアの天日塩田塩を日本の海水に溶かしてつくられた塩。
にがりをほどよく残し、塩かどのない辛さが特徴。

 

天日濃縮
海水塩を天日で乾かした塩。その中でも天日海塩は、
天日だけで塩にする製法でつくられる。
釜焚き塩は塩田で海水を濃縮し、釜で焚いて結晶化させる。


釜炊き塩

海の精あらしお
海の精あらしお
日本の伝統的な製法と成分の塩を復活させた塩。
伊豆大島にある塩田で天日濃縮させた海水を、
平釜で煮詰め、まろやかな味わいに仕上げた。

 

天日海塩

粟国の塩(天日)
粟国の塩(天日)
沖縄県・粟国島周辺の海水が原材料。
風と太陽熱で水分を蒸発させ、さらに温室の中で
20日間ほど結晶させた後、脱水・乾燥させてつくる。

ゲランドの塩
ゲランドの塩
フランスの西海岸、ブルターニュ地方にあるゲランド塩田からつくられる塩。
9世紀以来続く伝統手法を用い、塩職人の手により生まれる。

WALTER 水

水の個性によってパンの仕上がりは変化する。水はパン生地をまとめる立役者だ。
水分の硬度や温度すべてが生地のでき上がりを左右する。
日本の水は軟水が多いので、作りたいパンに合わせて水を選びたい。

 

軟水 硬度:0~178未満
カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分をあまり含まない水のこと。
日本の水のほとんどはこの軟水。素材の味を引き出しやすく、浸透もしやすいのが特徴。

サントリー天然水(南アルプス)
サントリー天然水(南アルプス)
甲斐駒ケ岳をはじめとした、南アルプスの山々に育まれたナチュラルミネラルウォーター。
硬度:30 Na:0.4~1.0mg Ca:0.6~1.5mg Mg:0.1~0.3mg K:0.1~0.5mg

ボルヴィック
ボルヴィック
フランス・オーヴェルニュ地方の6つの火山層でろ過された、
地下90mから取水したナチュラルミネラルウォーター。

硬度:60 Na:1.16mg Ca:1.15mg Mg:0.80mg K:0.62mg

 

中硬水 硬度:178~357未満
軟水とも硬水とも呼ばれない、ミネラル分をほど良く含んだ水のこと。
フランスやイタリアなど、ヨーロッパでは、軟水~硬水までさまざまなものがあるが、
水自体の個性もこのあたりから感じられる。

エビアン
エビアン
フレンチアルプスのエビアン・レ・バンで約15年かけて湧き出た手つかずの水を取水。
硬度:304 Na:0.7mg Ca:8.0mg Mg:2.6mg

ヴィッテル
ヴィッテル
フランス北東部に位置するヴォージュ山脈のふもとにある
水質保護地域で育まれた天然水を取水。

硬度:315 Na:0.77mg Ca:9.4mg Mg:2.0mg K:0.50mg

 

硬水 硬度:357~
カルシウムやマグネシウムを豊富に含んだ水のこと。
硬度400程度のものから度1600を超えるものまであり、
数字が大きくなるほど個性が強くなる。
味わいは含有成分によって異なる。

コントレックス
コントレックス
フランス北東部のコントレックスヴィルが取水地の、
フランス初の公式ナチュラルミネラルウォーター。

硬度:1468 Na:0.94mg Ca:46.8mg Mg:7.45mg K:0.28mg

クールマイヨール
クールマイヨール
マイヨールアルプス山脈にあるモンブラン山の南側、
標高1224mが取水地。石灰岩などの地層でろ過された超硬水。

硬度:1612 Na:0.08mg Ca:53.0mg Mg:7.0mg K:0.2mg

YEAST 酵母

パンがふっくらぷっくりとふくらむのは、酵母がしっかりと働くから。
パンの発酵には欠かすことのできない酵母の種類についてご紹介。
かかる時間や手間ひま、風味のよさにも関わる重要なパーツだ。

イースト

イースト 安定した発酵力を持ちパンづくり初心者に最適
パン用の酵母を抽出し、イーストフードを与えて純粋培養したもの。
安定した発酵力を持つ。

生イースト

生イースト
パン用の酵母を純粋培養、圧縮したもの。
ドライイーストの代わりに使う時は、3倍の量を入れる。
砂糖を多く含む生地に適している。

野生酵母

野生酵母 素材由来の風味が香る自家製の酵母
自家製酵母とも。穀物や野菜、果物由来の菌を培養したもの。
時間も手間もかかるが、素材由来の風味が楽しめる。

野菜系

野菜系
トマトや玉ねぎなどの野菜から起こす酵母。
フルーツの酵母と同じく、こちらも糖度の高い
季節の野菜で作ると、発酵力の高い酵母になる。

天然酵母

天然酵母 自然培養の天然酵母は小麦の旨味を引き立てる
添加物を加えて培養する“イースト”と区別するための名称。
発酵に時間がかかるが、何に由来するかにより、個性的な風味を味わえる。

ホシノ天然酵母パン種

ホシノ天然酵母パン種
日本古来の醸造技術を生かして作り上げている、
米由来の酵母と麹を合わせたパン種。
シンプルな素材で、香りの良い味わい深いパンが焼き上がる。

あこ有機培養酵母ストロング

あこ有機培養酵母ストロング
米と小麦のみを原材料とした天然酵母。
発酵香を抑えているので小麦粉のもつ風味が生きてくる商品。
食パンや菓子パンなどオールマイティ̶に使用できる。

白神こだま酵母ドライ

白神こだま酵母ドライ
世界自然遺産白神山地から発見された純野性酵母。
発酵力にも優れ、自然派の本格的なパンを短時間で焼き上げる。
少しの糖分で、自然な甘さが出る。

自家製酵母の作り方

酵母の原料にする材料は、糖度が高いほうが扱いやすい。
乾燥レーズンなら、四季を問わず入手しやすく失敗も少ないので、
はじめての自家製酵母作りにはおすすめ。

材料

【 材料 】

乾燥レーズン…100g
水…200㎖
モルト(麦芽糖)…1~2㎖
※てんさい糖1~2gで代用可

1

1 清潔な瓶にすべての材料を入れる
煮沸消毒をした、清潔な蓋つきの瓶の中に、すべての材料を入れる。
モルトは、酵母のエサとなる。1~2滴でOK。

2

2 直射日光をさけ28~30℃で4~5日間
風通しがよく、直射日光の当たらない場所に4~5日置く。
蓋は密閉させず(発酵で爆発する恐れ)、1日1回は蓋を開ける。

3

3 4~5日で発酵したら瓶から出してこす
4~5日経って、酵母がしっかり発酵したら(プクプクして、
ブランデーのような甘い香り)、瓶から出しガーゼで漉す。

4

4 ガーゼを絞り酵母液を作る
ガーゼをぎゅっと絞って、レーズンと酵母液を分ける。
パン作りに使用するのは、酵母液のみ。
レーズンの旨味や酵素は、この酵母液に抽出されている。

5

5 酵母液ができた! 冷蔵庫で保存する
酵母液を瓶に戻して、でき上がり。保存は冷蔵庫で約2週間。
酵母液はそのまま生地に混ぜるのではなく、
ルヴァン種を起こしてから、パン作りに使う。

パン作りは難しそうだと身構えてしまう人も多いかもしれませんが、基礎知識を学んだうえで、失敗を恐れず楽しんでみましょう。風味や食感を自分好みに仕上げられたら喜びもひとしおです。バターやジャム、ナッツやフルーツ、チョコレートなどをトッピングして、お菓子感覚でいただくのもおすすめです。焼きたてのパンの香りは何者にも代えがたい幸せな気分にしてくれますよ。

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