2018/06/29
Kurashiプロジェクトでは、雑誌にWEBにと日々お世話になっている料理家さんの間で愛用者の多いGLOBAL®の包丁。世界初のオールステンレス一体型包丁で知られるGLOBALから、新たに日本人の使い勝手に合わせたGLOBAL-IST®というシリーズが誕生しました。
「料理を家事の一環としてのみ考えるのではなく、あえて手間をかけ、手間を楽しみ、たくさんの愛情を注ぎこむことが料理の悦びだと考えたい」そんな人のために作られたGLOBAL-ISTの制作秘話について『Kurashi』編集長の杉村が話を伺いました。
前編ではGLOBALの歴史やGLOBAL-IST(以下IST)誕生の裏側、スタンダードモデル(以下スタンダード)との違いについてフォーカスしましたが、本編では開発にかかわったデザイナーのこだわりやGLOBAL-ISTが目指す家族の絆、料理のあり方について迫ります。前編はこちら
左:営業部部長の小野悟さん。鮮魚を求めて魚市場にいくほどの刺身好き。好きな包丁はやっぱり柳刃包丁
中央:営業部の滝口絵里さん。面倒くさがりというが、得意料理はじゃがいも料理。コンパクトな皮むき包丁で丁寧に皮をむく
右:商品開発課の脇田和海さん。好きな包丁に万能包丁を選ぶ隙のなさ。得意料理は、家庭料理の定番、カレー
日本向けに特化した包丁の形? デザイナーがGLOBAL-ISTにかけたこだわり
編集長:同じように見えるスタンダードとISTですが、こんなにも切れ味が違うとは思いませんでした。
脇田:切れ味の違いはISTを開発するにあたり、日本人にとって心地よいところを目指した結果です。例えばパン切り包丁はスタンダードにもあるのですが、全然刃の波の深さが違うし、ISTは両刃で切っ先も尖っていて。
編集長:本当だ。刃先の形も刃の付き方も全然違いますね。
脇田:スタンダードはヨーロッパの硬いパン向けなのですが、ISTは日本でよく食べられている軟らかい食パンやカステラなども得意とします。切っ先に向かってカーブがあるので、最後のひと断ちで軟らかい食パンでも切り落とすことができるんです。峰の反った形状は機能上の目的が主ですが、琴や鳥居、日本刀などを参考に、日本的なイメージを感じさせる外観にしたいと思いました。
編集長:そのための違いだったんですね。日本の料理文化、現代性、プロダクトとしてのデザイン性と、すべてに気を配って作っているとは! デザイナーとしての本領を発揮し尽くした一本ですね。ちなみに滝口さんはISTの中では何が一番お好きですか?
滝口:ISTは全部好きなのですが、特に小さい皮むきをよく使っています。結構何にでも使えてすごく便利です。このサイズだとすぐに引き出しから取り出せて、ミニトマトや卵焼きなどをちょっと切るのにもちょうどよくて。それに包丁を鉛筆みたいに持ってラディッシュなどを細工切りするとちょっとかわいい仕上がりになるんですよ。
編集長:たしかに、このサイズは使いやすそうですね。細かな作業もしやすそうです。細工切りって、子どものころは嬉しかったな。タコさんウインナーもうさぎのりんごも。
小野:そのひと手間なんですよ。そういうことが真心につながるわけじゃないですか。やっぱりお弁当を開けた時に真っ二つにラディッシュが切られて入っているより、ちょっとかわいくなっていた方が、ここまで手間かけてくれたんだ! って気持ちになると思います。
編集長:確かにそのひと手間がすごく嬉しかったり、思い出に残ったりするんですよね。そういった料理の切る工程にひと手間をかける文化って日本だけなんですか?
脇田:和食の煮物に入っている花の形に切った根菜類や角の立った刺身など、切るという工程に手間暇をかけることで、見た目にも美味しさを感じさせることはとても日本的な文化だと思います。
6本そろえてひとつのチーム。 家族の絆につながるGLOBAL-ISTのラインナップ。
滝口:もうひとつISTとスタンダードの違いがあります。スタンダードはこの中から1本だけ買うとしたらどれがいいですかと聞かれたら、これっと選ぶことができるのですが、ISTはチームでひとつという考え方なんです。万能包丁はなんでも切れる設計にしていますが、やりにくい作業もあります。小型だとスライスは得意だけど千切りは苦手だよねとか。たとえば、玉ねぎのみじん切りをするときに、万能と小型の2丁を使い分けて丁寧に作業をすると、刻んだ粒がそろうようになります。そうすると均一に火が通りやすいし、完成した料理の味わいや舌触りも変わってきます。いろんな得意分野を持ってひとつに集まってきたのがISTの最大の特徴なので、ぜひ全部そろえていただきたいですね。
編集長:なるほど。そう聞くと全部そろえて使い分けてみたくなります。しかし、そもそも包丁を複数そろえるというのは日本人にとって向いていると思いますか?
小野:道具を使い分ける楽しさは日本人には受けいれてもらえると思っていますが、日本のキッチンは狭いので、課題も多いです。また、これはひとつ提案なのですが、包丁がひとつだけだと、自分が切るだけですよね。でも包丁が何種類もあったら、旦那さんや娘さん、息子さんに「あなたパン切っておいてね」、「あたなは皮むき手伝って」ってなりますよね。
編集長:それすごくいい提案。家族みんなで料理を作ると、絆も深まりそうですね。うちの3歳になる息子もちょっと手伝っただけで、自分がやったぞって母親に自慢げに見せますし、苦手なものも食べたりしますから、食育にもつながりそうです。
小野:そういう家族の絆みたいなものに発展させていきたいんですよね。同じものを食べるから家族なんだと思うんです。洞穴に住んでいたころから、ひとつのコミュニティーがひとつの料理を皆で食して、それが家族の単位になったんじゃないのかなって思っています。日本でも同じ釜の飯を食した同志は家族みたいな関係性になるわけですし。
「作る人から創る人へ」キャッチフレーズにかけた想い
小野:そしてやっぱり「切る」というのは料理の基本形ですから、切ることから料理が楽しいと思えれば、次に鍋を揃えようかな、お皿も揃えようかなって暮らしのイメージが広がっていくと思うんです。パッケージの中央にも書かれている「作る人から創る人へ」というキャッチフレーズには作業として「作る」のではなく、喜んでくれる人のことを想像しながら料理を創ってほしいという意味を込めています。
編集長:この白いパッケージも珍しいですね。包丁のパッケージは黒っぽいものが多いイメージでした。
小野:包丁を単純作業のための一道具としてとらえるのではなく、料理だとか暮らしとかのこだわりを表す道具として考えています。そこでパッケージの色も白にしました。色はあなたが決めてくださいねと。
編集長:なるほど、キャッチフレーズの言葉やパッケージの色、最初はピンときていなかったのですが、話を聞いて合点がいきました。料理ってどんどん短時間化してきているし、作業化してきているし。一方で丁寧に生きたいっていう欲求は増えてきている。ミールキットや機能的な調理家電が普及して、簡単に美味しいものが食べられるようにはなるけれど、創る喜びは実際に作業しないと生まれないし、食べる人のことや味を想像しながらの創る楽しみってものすごいクリエイティブなものじゃないですか。食べたら5分で終わっちゃう料理だとしても、腹を満たすことが食の第一義だとしても、創る楽しみ、食べる楽しみは絶対に損なわれないし、なくならないものだと思います。
料理や道具に対し少しこだわりのある方を対象に、コンセプトからラインナップ、デザイン、パッケージに至るまで、すべてに徹底的にこだわって作られた日本向けのシリーズ、GLOBAL-IST。家族の絆を深めるためにも、自分の暮らしに彩を与える1アイテムとしても、是非一度試し、そろえてみてはいかがでしょうか。
【GLOBAL-IST】 https://www.yoshikin.co.jp/jp/products/global-ist/brand/
【今回伺ったお店はこちら】YOSHIKIN SHOP 六本木店
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TEL : 03-3568-2356
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